
有吉佐和子さんの「真砂屋(まなごや)お峰」の初版が発行されたのが
今から33年前。恥ずかしながらこの本を初めて読んだんですが
あまりに今の世相を示しているようで背筋がぞっとしました^^;
舞台は徳川11代将軍家斉公の御世。
200年以上も続く材木商の大店「真砂屋」で繰り広げられる人間模様。
家訓として質素倹約に努め、主人を筆頭に店の者たちも木綿の着物しか着用せず
ご飯も一汁一菜。
火事と喧嘩は江戸の華といわれた時代だけあり、一度火事が起これば
材木商はたちまち蔵が建つほど懐が暖かくなるが、真砂屋は焼け出された店子の
人達に木綿の着物を誂え、寝る場所や飯まで用意して棟割長屋が再び出来上がるまで
一切お世話をすることで稼いだお金を奉仕・還元していた。
また雑木しか扱わないことによって武家屋敷の普請に携わることなく
大名貸しと言われる半ば脅迫じみた金貸しをせずにすんでいたのも
200年商いが続けられた所以なのかもしれない。
穏やかに話は進行していくがその内、江戸に大きな火事が起こり
ことごとく材木の価格が暴騰しはじめ真砂屋くらいしか扱わなかった
雑木までもが高値で取引され、しかも人を騙して偽装して何倍の利益を取るという
悪徳商までもがあらわれる。真砂屋七郎兵衛の「末世ですよ」の言葉が耳に残る。
ところが火事がピタッと無くなれば無くなるで江戸の経済は完全に火が消え
不景気の真っ只中になってしまうという始末。
平和な世の中が続くと物が有り余り資材も流通しなくなるので、にわか材木商は
殆んどが潰れ悪銭身につかずの例えの如く消えてしまうのだ。
特に記述の中で気になった言葉は
「火事がなくなって困るのは左官大工の小者より実は材木屋と呉服屋だ。
焼けて失せればこそ売れる品でござんすからね」
金貸しの三倉屋直右衛門から出た言葉だが実に重い話です。
これが33年前に書かれた小説などとは思えないリアルさで本当にびっくりしました。
また文中、着物の細やかな説明が出てくるなど楽しいこともあり一気に読み上げちゃいました。
読み終えた後は、すがすがしい気持ちになれる本ですよ^^